コラボレーション Collaboration

レポート

【EUに関する新刊】中西優美子編『EU環境法の最前線 日本への示唆』(法律文化社、2016年3月24日刊行)
eu-envlaw-bookj
 
eu-envlaw-booke

中西優美子編『EU環境法の最前線 日本への示唆』(法律文化社、2016年3月24日刊行)
https://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03746-6
Yumiko Nakanishi, ed., Contemporary Issues in Environmental Law: The EU and Japan (Springer, published 29 February 2016)
http://www.springer.com/in/book/9784431554349

本書の編著者である中西優美子先生より、本書のご紹介を頂きました。

——————
両書は、EUSI(一橋大学、慶應大学および津田塾大学のEU研究のためのコンソーシウム)(第2期2013年4月-2016年3月)の法分野プロジェクトの成果である。

プロジェクトは、ホップ・ステップ・ジャンプという段階を踏んだ。
1年目は、EU環境法研究会を一橋大学で数回行った。研究会のメンバーは、川崎恭治先生(一橋大学)、高村ゆかり先生(名古屋大学)、南諭子(津田塾大学)、森田清隆(経団連)、佐藤智恵先生(明治大学)、Andrea Ortolani先生(慶應大学)と私の7名から構成された。ホップとして、同研究会ではそれぞれがテーマについて報告をし、議論を重ねた。

2年目は、ステップとして、同研究会を随時開催しながら、2014年10月にEU環境法に関する国際シンポジウム(於:一橋・如水会館)を開催した。このシンポジウムには、本書の執筆者である、Alexander Proelss先生(ドイツ・トリア大学)およびSara De Vido先生(イタリア・ベネチア大学)を招聘し、講演をして頂いた。

3年目は、同研究会の開催と共に2015年4月にEU環境法に関する国際シンポジウム(於:一橋大学・佐野書院)を開催した。このシンポジウムには、Hans-Georg Dederer先生(ドイツ・パッサウ大学)を招聘し、講演して頂いた。
ジャンプとして、その成果を本書して刊行することになった。

本書・日本語版は、EUにおける環境保護に関するシリーズ本として、定評のあるMichael Schmidt先生とLothar Knopp先生監修の Environmental Protection in the European Unionシリーズ の第5巻 (Volume 5) として出版された本書・英語版の翻訳を基礎としたものである。本書の第2章、第3章、第7章及び第8章は、Springer本の該当章をそのまま翻訳したものであるが、その他の章は執筆者が元の英語原稿を基礎にしつつ、日本の読者に向けて内容を書き改めたものとなっている。

本書『EU環境法の最前線―日本への示唆―』は、メインタイトルが示すように、EU環境法の中でも特に新しいトピックスを取り上げている。また、サブタイトルにあるように、取り上げたトピックスおよび内容が日本への示唆となるものとなっている。
本書は、10章から構成される。以下において簡単に内容紹介をしていく。

第1章「国際環境法、EU環境法と国内環境法の相互関係」(中西優美子)では、国際環境法およびEU環境法が日本法にどのような影響を与えたかを、日本法とEU環境法を比較しながら示している。

第2章「EU環境法の原則」(Alexander Proelß、訳中西優美子)では、EU運営条約191条2項に定められた環境に関する4つの原則が説明され、特に日本においても関心がもたれている「予防原則」について、EU司法裁判所の判例を踏まえた詳細な分析がなされている。Proelß先生は、ヨーロッパにおける国際およびEU環境法の第一人者として活躍されており、この分野で多数の著作を公表されている。先生は、これまでに数多くの国際環境法シンポジウムを開催し、その成果が本として出版され、世界的に名の知れているドイツ・トリア大学の環境・技術研究所(IUTR)の所長をされている。

第3章「環境分野におけるEUの権限の範囲」(Alexander Proelß、訳中西優美子)では、日本人にとってはなじみなく、理解するのが難しいEU環境措置を採択する権限、法的根拠条文について詳細な検討がなされている。これらを正しく理解することで、EU環境法を適格に把握することができるようになる。

第4章「オーフス条約における『司法へのアクセス』とEU環境影響評価指令」(南諭子)では、日本における環境アセスメント違反の司法審査にも言及がなされ、オーフス条約により設定された国際基準が有する国際法の意義が検討されている。南先生は、大学院生の頃より環境影響評価を研究テーマとされ、それを色々な角度から検討されてきた。本章では、その検討がオーフス条約における「司法へのアクセス」の観点からなされた意欲的なものとなっている。

第5章「地球温暖化防止に関する日本とEUの取組」(森田清隆)では、単に地球温暖化法について述べられるのではなく、WTOとの整合性の文脈で技術基準・規格の導入、国際的な問題となったEU排出枠制度の航空部門への適用、国境税調整などに関して踏み込んだ検討がなされている。

第6章「EUにおける動物福祉措置の意義と国際的な影響」(中西優美子)では、日本ではまだ議論が不十分である、新しい課題「動物福祉」が取り扱われている。EUにおける動物福祉に関する措置の発展、動物福祉配慮原則の確立及び諸判例を踏まえたうえで、具体例として動物実験禁止とアザラシ毛皮製品取引禁止を挙げ、日本への示唆を与えるものとなっている。

第7章「EUにおける生物多様性の保護」(Sara De Vido、訳中西優美子)では、EUにおける生物多様性保護の核となっている2つの指令、野鳥の保護指令並びに自然生息地および野生動植物に関する指令がEU司法裁判所の法務官意見および判決を踏まえ、詳細な分析がなされている。Vido先生はイタリア人であるので、イタリアにおける同指令の実施についても検討がなされている。

第8章「EUにおける海洋生物保護」(佐藤智恵)では、第7章が主に陸の生物保護であったのに対して、主に海の生物保護が扱われている。第7章と第8章を合わせて読むことで、EUにおける生物の保護を全体的に把握することができるようになっている。さらに第8章では、海洋生物保護が漁業資源の観点や環境戦略の文脈からも検討されている。海洋国の日本にとって参考になるだろう。

第9章「EUにおける遺伝子組み換え体の課題」(Hans-Georg Dederer、訳藤岡典夫)では、今後日本でも重要となってくるであろう課題、GMO規制が扱われている。EUでは、アメリカと異なり消費者団体のGMOに対する懸念が多く、慎重に規制が実施なされており、日本にとって非常に参考になる。Hans-Georg Dederer先生は、EUのGMO規制に関する第一者であり、これまで数多くの著作を発表されてきている。本章を翻訳された藤岡典夫先生は、日本では唯一と言っても過言でない、GMO法規制の研究者である。

第10章「福島事故後の日本およびEUにおける原子力安全レジームの課題と見通し」(川崎恭治・久住涼子)では、2011年3月の東日本大震災による福島原子力発電所の事故を受け、見直された日本およびEUにおける原子力安全レジームが検討されている。川﨑先生は、国家責任を長年の研究テーマとされてきており、また、久住氏は、大学院生の頃から原子力法を専門とし、現在関連機関で勤務されている。2人は、これまでにも共同でこの分野について論文を発表されている。

本書は、EU法や環境法を学ぶ学生あるいはそれらの研究者だけではなく、実務家、また、今後の日本の環境政策の形成を担う官公庁関係者、環境や動物・植物保護にかかわるNGOあるいはそれらに興味をもつ市民の方など幅広い方に読んでいただきたいと考える。

また、原書(英語版)においては、これに加え、Andrea Ortolani先生による、”Environmental Damage Remediation in Japan: A Comparative Assessment”が所収されている。

(※なお2016年5月末までに以下のチラシよりお申し込みの方に限り、定価3456円のところ3000円(税込み・送料無料)でご購入いただけます)
 特別価格販売のご案内――中西優美子編『EU環境法の最前線 日本への示唆』(法律文化社、2016年3月24日刊行)