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EUSIメールマガジンVol.105 (2016年11月25日)「求められる裁量の復権 原則への固執がもたらした欧州金融不安」(土田陽介)

◆EUSIメールマガジン Vol. 105 (2016年11月25日)◇

http://eusi.jp/

EUSI (EU Studies Institute in Tokyo)は、一橋大学・慶應義塾大学・津田塾大学の3校のコンソーシアムによる、
EUに関する教育・研究・広報を行う拠点です。
(詳しくは以下をご覧ください)
http://eusi.jp/about/

【EUSI Commentary Vol. 086】

「求められる裁量の復権 原則への固執がもたらした欧州金融不安」
土田陽介 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査本部研究員)

EUは2014年5月に「金融機関の再生及び破綻処理に関する指令(Bank Recovery
and Resolution Directive, 略称BRRD)」を採用し、金融機関の再生及び破綻
処理に関しては原則としてベイルイン方式を実施する方針を定めた。

BRRDは15年1月から適用されており、今後EUで金融機関の再生及び破綻に関する
事案が発生した場合、当局はベイルイン方式により、それを実施することが
原則として義務付けられている。

ベイル(bail)とは「保釈金」を意味する英単語である。経営に対する保釈金、
つまり資本金を内部から調達すること、これをベイルインと言う。つまり、
金融機関の再生や破綻処理に関するコストを金融機関に対して要求すること、
それがベイルインとなる。金融機関に対して政策対応のコストを求めるという
ことは、金融機関の預金者や債権者、そして株主にコストを求めることと同義
である。

一方で、資本金を外部、つまり政府から得ることをベイルアウトと呼ぶ。経営
危機に陥った銀行に対する対応としては、このベイルアウトこそが伝統的な手
法である。

ベイルアウトの最大の利点は、その即効性にある。金融機関に対して公的資金
を注入するということは、政府が金融機関の再生や破綻処理のコストを負担す
ることを意味している。
 ・・・
(続きはこちら↓)
http://eusi.jp/mail-magazine/commentary/commentary_086/

【EUSIイベントご案内】

1. 日本EU学会・EUSI共催「第37回(2016年度)日本EU学会研究大会」

日時: 2016年11月26日(土)-27日(日)
場所: 一橋大学 国立西キャンパス本館 (東京都国立市中2-1)

共通論題「自由・安全・正義の領域 難民・テロとEU」

参加: 事前登録不要 (どなたでも参加できます)、学会会員無料・非会員3000円
詳細は以下をご覧ください
http://www.eusa-japan.org/?page_id=18

2. EUSI国際シンポジウム「Human Rights Issues in Europe and Asia」

日時: 2017年1月30日(月) 10:30-18:15
場所: 一橋大学一橋講堂 (千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2F)

10:30 Opening Address 中西優美子 (一橋大学)

10:45-12:30 (First session)
只野雅人 (一橋大学)
“Protection of Fundamental Rights and the Role of the Judicial Branch”
實原隆志 (福岡大学)
“Guarantee of the Right to Freedom of Speech in Japan-Comparison with
Doctrines and Institution in Germany”
Shu-Perng Hwang (台湾・中央研究院)
“Does Formal Rank Matter? A Framework-Oriented View on the Binding
Force of International Human Rights Law on Constitutional Law”

13:40-14:50 (Second session)
Ferdinand Wollenschlager (University of Augsburg, Germany)
“Fundamental Rights Regimes in the European Union”
中西優美子 (一橋大学)
“Human Rights in the EU’s External Relation” (tentative)

15:05-16:15 (Third session)
Niels Petersen (University of Munster, Germany)
“The Principle of Non-discrimination under the European Convention on
Human Rights and the EU Charter on Fundamental Freedoms”
Sara De Vido (Ca’ Foscari University of Venice, Italy)
“Women’s Rights and Gender Equality in Europe and Asia”

16:30-18:15 (Fourth session)
大藤紀子 (獨協大学)
“Human Rights and Nationality” (tentative)
Matthias Vanhullebusch (上海交通大学)
“China’s Development Banks in Asia: A Human Rights Perspective”
竹村仁美 (一橋大学)
“The Asian Region and the International Criminal Court”

Moderator: Andrea Ortolani (慶應義塾大学)

言語: 英語、参加: 事前申込要
名前・所属・どのようにこのシンポジウムを知ったかを明記して、EUSI事務局
(info@eusi.jp)までメールでお申し込み下さい (2017年1月25日(水)まで)
http://eusi.jp/outreach/2017-1-30/

3. アジア太平洋EU学会 (EUSA AP) 2017年度研究大会報告募集のお知らせ

アジア太平洋EU学会(EUSA AP: EU Studies Association Asia Pacific)の年次
大会が、2017年度は日本がホスト国となり青山学院大学にて開催されます。
以下研究報告を募集しております。奮ってご応募ください。

共通論題「The Roles of the EU and Asia Pacific in the Global Era」

応募資格: 研究者及び大学院生 (修士課程・博士課程含む)
応募書類: 報告タイトル及び報告概要 (英文300 words) を応募期間内に提出
応募期間: 2016年10月1日(土)-12月31日(土)

採否通知: 2017年3月15日(水) 報告者は採否通知受信後10日以内に要確認返信
報告論文締切: 2017年5月31日(水)

研究大会本番日時: 2017年7月1日(土)-2日(日)
研究大会本番会場: 青山学院大学 青山キャンパス

詳細は以下アジア太平洋EU学会 (EUSA AP) の研究大会HPをご参照下さい
http://eusaap.org/12-events/eusa-ap-events/21-2017-call-for-papers

【EUSI所属研究者による記事・執筆情報紹介】

東史彦 (EUSI慶應分室、ジャン・モネEU研究センター(慶應義塾大学)事務局長)
『イタリア憲法の基本権保障に対するEU法の影響』
(国際書院、2016年11月20日刊行)
http://www.kokusai-shoin.co.jp/278.html

【EUに関する新刊紹介】

川野祐司『ヨーロッパ経済とユーロ』(文眞堂 2016年10月28日刊行)
http://www.bunshin-do.co.jp/catalogue/book4920.html

本書の著者である川野祐司先生より、本書のご紹介を頂きました。

—————
ヨーロッパ経済を学ぶ難しさに範囲の広さがある。
EUの加盟国は28カ国もあり、28カ国の経済プロフィールや抱える課題は大きく
異なっている。EUが関与する政策も多岐にわたり、次々と打ち出される政策を
全て把握するのは不可能だ。メディアは問題が起きたときに偏った見方のニュ
ースを断片的に伝えるだけにとどまっている。本書はそのような状況を打破し、
ヨーロッパ経済への理解を深めることを目的としている。

第1部ではEUの経済政策を扱っているが、取り組みの具体例を数多く紹介して
いる。複雑でわかりにくい経済ガバナンスも整理されている。
第2部では38の国・地域を紹介している。27カ国・48枚の写真や観光情報は
ヨーロッパをよりよく知る手掛かりとなる。第2部では移民・難民問題、イン
ダストリー4.0、バリューチェーン、租税回避など多くのトピックが盛り込ま
れている。
第3部ではユーロの金融政策やマイナス金利などを扱っている。国際金融や
金融政策に関係する読者にとって第3部は必読文献になるだろう。

ヨーロッパ経済に関する著作の多くは複数の著者によるものであるが、本書は
1人の著者によって書かれており、テーマ、表現など一貫性が高い。そのため、
数多くのトピックをコンパクトにまとめることができている。読み進めていく
にしたがって、より難しいトピックにも挑戦できるようにも配慮されている。
 ・・・
(続きはこちら↓)
http://eusi.jp/outreach/outreach-report/kawano-2016/

川野祐司 (東洋大学経済学部教授)

【編集後記】

先日の米国大統領選挙では、大方の予想を覆してトランプ候補が指名を獲得し、
世界中に衝撃が走りました。ところが、トランプが指名を確実にした後で姿を
現わし、勝利演説を行ったところ、これまでとは異なるそのオーソドックスな
内容に世界はまた驚くことになりました。日経平均株価は選挙の開票が進むに
つれてどんどんと値を下げていましたが、この演説後の翌日の日経平均株価は
前日の下げ幅を上回る1,000円を超える大幅な値上がりとなりました。安倍首相
が早くもニューヨークで会談するなど、各国からのリアクションも異例の大き
さになっています。
選挙戦を振り返って様々なことが言われています。例えば、彼は大変な戦略家
であって、その過激な言動は冷静な計算にもとづいていた、などというのが
プラスの評価の最たるものでしょう。確かにそういう側面もあったかもしれま
せんが、人柄そのままに持論を展開していたという部分もやはり大きかった
ように思われます。明らかにヒラリーに欠けていたストレートに自分を出す
愛嬌のようなものが、意外と多くの白人達(特に貧困白人層)に共感されたので
はないでしょうか。
実は、政治やビジネスの世界にとどまらず、あらゆる分野でこの戦略と愛嬌と
いう二つは重要なものなのかもしれません。今回の土田先生の論稿では政策
形成における裁量とルールの問題が取り上げられていて、必要なことはどちら
か一方に固執することではなく、状況に応じてその間にある「解」を見つけて
いくことだと主張されています。確かにケインジアンとマネタリストの論争に
おいても、極端な主張の危うさが浮き彫りにされていたように思われます。
トランプとヒラリーの選挙戦を考えるまでもなく、冷静な戦略的思考と飾ら
ない暖かな人柄を兼ね備えるにはどうしたらよいのか、マーシャルの言う
「cool head」と「warm heart」とのバランスをどのようにとるのかについて、
もう一度考えてみてもよいのかもしれません。

(藤川哲史・EUSIメールマガジン編集担当)

先日国立西洋美術館で開催されている「クラーナハ展」を観に行ってきました。
ルカス・クラーナハ(1472-1553)は、日本ではあまり馴染みのない名前かもしれ
ませんが、現在のドイツ東部にあるヴィッテンベルクにてザクセン選帝侯フリ
ードリヒ3世に見出され、宮廷画家として活躍したドイツ・ルネサンスを代表
する芸術家です。彼は宮廷画家としてフリードリヒに仕えるのみならず、自ら
大型の工房を構えて数多くの弟子たちと集団制作を行い、絵画の大量生産を
手がける事業家としても先駆的な成功を収めた人物でした。
クラーナハが同時代に親しく交わっていた人物のひとりに、宗教改革の創始者
であるマルティン・ルターがいます。クラーナハとルターは同じ頃ヴィッテン
ベルクを拠点に活躍し、またクラーナハが仕えたフリードリヒは「賢明公」と
して名高く、ルターの良き理解者であり庇護者でもありました。その意味で、
ヴィッテンベルクの街は宗教改革の中心的な舞台となった場所であり、のちに
街の名前にルターの名を冠することになります。
そんな来年2017年はそのルターの起こした宗教改革から500周年にあたり、今回
日本で初めてとなるクラーナハの展覧会にも、ルターの肖像画や宗教画などが
展示されています。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
また今週末は、日本EU学会が一橋大学にて開催されます。EUSIも運営に共催
として参加させて頂く予定です。ぜひ会場にて多くの皆さま方とお目にかかれ
ますことをたのしみにしています。

(林 大輔・EUSIメールマガジン編集担当)

EUSI (EU Studies Institute) in Tokyo

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