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EUSIメールマガジンVol.109 (2017年2月15日)「地域統合は生き延びるか?―パワーシフト、福祉国家ナショナリズム、地域からの連邦制―」(羽場久美子)

◆EUSIメールマガジン Vol. 109 (2017年2月15日)◇

 http://eusi.jp/ 

EUSI (EU Studies Institute in Tokyo)は、一橋大学・慶應義塾大学・津田塾大学の3校のコンソーシアムによる、
EUに関する教育・研究・広報を行う拠点です。
(詳しくは以下をご覧ください)
http://eusi.jp/about/

【EUSI Commentary Vol. 090】

「地域統合は生き延びるか?
―パワーシフト、福祉国家ナショナリズム、地域からの連邦制―」
羽場久美子 (青山学院大学国際政治経済学部教授、ジャン・モネ・チェア)

イギリスがEUから国民投票で離脱を決定し、さらにメイ首相は1月17日、欧州
単一市場と関税同盟からの離脱という「Hard BREXIT」を議会に諮ることとな
った。
アメリカではトランプ大統領がTPPからの離脱を表明、シリア等7か国の市民に
大統領令として「移民入国禁止令」を出し、空港で何万人もの人々が入国を
止められた。これに連邦地域裁判所16州とワシントン地裁が差し止め命令を
行い大統領令に対し違憲の疑いを表明、空港で差し止められていた全米6万人
の人々は入国を再開した。それに司法省が介入したが連邦控訴裁はトランプの
控訴を却下、現在、大統領と司法の対抗関係が続いている。

この間アメリカの国際関係学会ISA、アメリカ政治学会APSAの理事会や各種委
員会、各大学でも野火のように、大統領令の人権侵害、宗教の自由・民族の
自由・学問の自由への侵害と違憲の疑い、それへの対抗を次々に声明で出し
始めている。民主主義と法の支配からの対抗が始まっている。

他方欧州ではこの間、ロシアと欧州右翼政党との接近、特にロシアから欧州
右翼への資金供与が報じられておりECFRをはじめ様々のメディアがそれを指摘
している。筆者もエコノミスト2017年予測でロシアと欧州右派との関係につい
て言及した。

2017年、EU各国の総選挙、大統領選挙の年に、各国右派の成長、自国中心主義
が広がる中、EUSIが3月末で終了するのは・・・
 ・・・
(続きはこちら↓)
http://eusi.jp/mail-magazine/commentary/commentary_090/

【EUSIイベントご案内】

1. ジャン・モネEU研究センター(慶應義塾大学)「第95回慶應EU研究会」

日時: 2017年2月18日(土) 10:30-12:00
場所: 慶應義塾大学三田キャンパス 南館4階会議室

東史彦 (ジャン・モネEU 研究センター(慶應義塾大学)主任研究員・事務局長)
「カナダEU自由貿易協定(CETA)の批准と国際法、EU法、及びベルギー法」

主催: ジャン・モネEU研究センター (慶應義塾大学)
参加: 無料・事前登録不要 (どなたでも参加できます)
http://www.jean-monnet-coe.keio.ac.jp/index.html

2. 日本EU学会より以下のお知らせが届いています
2017年度(第38回)日本EU学会研究大会報告・ポスターセッション・年報執筆募集

共通論題: 「ローマ条約60年-危機の中の再検証」

申込締切: 2017年2月27日(月) 必着
申込書類: アンケート用紙(書式有)・報告要旨
年報原稿締切: 2017年10月20日(金)

大会日時: 2017年11月18日(土)・19日(日)
大会会場: 九州大学 (病院キャンパス・馬出九大病院前駅)

詳細は以下をご参照ください
http://www.eusa-japan.org/?p=1686

【EUSI所属研究者による記事・執筆情報紹介】

細谷雄一 (慶應義塾大学法学部教授、EUSI執行委員)
「イギリスのEU離脱問題」
『IIPS Quarterly』第8巻第1号(2016年1月26日)
http://www.iips.org/publications/iips_quarterly_08_01.pdf

中西優美子 (一橋大学大学院法学研究科教授、EUSI所長)
「ドイツ連邦憲法裁判所のEUとカナダの自由貿易協定(CETA)の締結に関する
仮命令」

【EU法における先決裁定手続きに関する研究】
『自治研究』第93巻第2号(2017年2月) 84-95頁

中西優美子 (一橋大学大学院法学研究科教授、EUSI所長)
「対外関係における欧州委員会とEU理事会の権限配分と機構間均衡原則」
『国際商事法務』第45巻第2号(2017年2月) 282-287頁
http://www.ibltokyo.jp/bulletin/1224.html

【EUに関する新刊紹介】

八木紀一郎、清水耕一、徳丸宜穂編著
『欧州統合と社会経済イノベーション 地域を基礎にした政策の進化』
(日本経済評論社、2017年2月1日刊行)
http://www.nikkeihyo.co.jp/books/view/2449

本書の編者である八木紀一郎先生より、本書のご紹介を頂きました。

—————
前世紀の90年代以来、欧州連合はその独自予算によって、域内後進地域や問題
地域を援助し、各種の地域的課題をとりあげる欧州地域政策を発展させてきた。
これは時事問題になることが少ないので欧州研究者のなかでも注目度が低いが、
地域、および加盟国と欧州連合を結びつける有力な紐帯として欧州統合を支え
ている政策である。

また、最近では「スマート・サステナブル・インクルーシブな成長」をかかげ
た欧州成長戦略(「欧州2020」)にとりこまれ、この戦略にとっての重要な政策
手段として位置づけられている。

本書は、欧州地域政策の発展・進化を軸として、欧州統合における地域的次元
の諸問題を位置づけたものである。

第一部では、2008年世界金融危機以来の欧州経済の停滞のもとでの社会経済成
長戦略の動揺、反欧州ナショナリズム勢力の台頭のもとでの欧州政治とマルチ
レベルガバナンスの再編成、環境政策とエネルギー政策の融合の「エネルギー
同盟」への収斂、移民・難民問題に反映した欧州内外の地域構造をとりあげて
いる。
原稿を揃える最終段階で、英国国民投票の結果が伝えられ、それに対応して
英国のEU離脱問題にかかわる補論を付加した。

第二部各論のパートでは、欧州地域政策におけるイノベーションとしてのイン
ターレグ、ドイツのハルツ改革、イタリアの社会保障削減、ドナウ諸国のマク
ロリージョン戦略、スペインの再生エネルギー普及、上部ライン地域の越境
通勤労働市場、フィンランドのイノベーション政策等の個別問題とともに、
ソーシャルイノベーション、スマートスペシャリゼーションなどの新しい概念
をとりあげている。
 ・・・
(続きはこちら↓)
http://eusi.jp/outreach/outreach-report/yagi-2017/

八木紀一郎 (摂南大学学長・京都大学名誉教授)

【EUに関するニュース】

2017年1月16日 EU外務理事会、シリアや中東和平協議を議論。EUシリア戦略や国際会議開催等検討
2017年1月16日 イラン核合意包括的共同行動計画履行1周年。モゲリーニ上級代表、成果強調の声明
2017年1月17日 欧州議会、新議長にタヤーニ欧州議員(欧州人民党:伊)選出。2019年まで2年半任期
2017年1月17日 EU、イスラム教徒への差別・憎悪に関するハイレベル会合をニューヨークで共催
2017年1月17日 メイ英首相、英EU離脱に向け12項目の目標事項発表。単一市場離脱・移民管理重視
2017年1月17日 スコットランド行政府、メイ英首相のEU離脱演説に反発。独立問う投票の意向示唆
2017年1月17日 アルファノ伊外相、伊上下両院合同外務委員会でロシアのG7復帰条件の検討を促す
2017年1月17-20日 日・EU EPA交渉首席交渉官会合、ブリュッセルで開催。関税削減など解決至らず
2017年1月17-20日 ダボス会議(WEF年次総会)開催。ハモンド英財務相、英EU離脱交渉長期化を否定
2017年1月19日 ECB理事会、主要金利や資産購入計画を据置き、見通し悪化の場合更なる措置を示唆
2017年1月19日 第2回EU・チュニジア「安保・対テロ」ハイレベル政治対話、両者の協力強化協議
2017年1月19日 日本政府、英EU離脱に関するタスクフォース会合。日系企業の懸念・要望調査指示
2017年1月20日 トランプ米大統領就任。就任演説で米国第一主義を強調。欧州でも反対デモ相次ぐ
2017年1月22日 仏左派政党の大統領統一候補予備選挙。アモン前教育相とバルス前首相決選投票へ
2017年1月23日 EU農水理事会、農業市場拡大の最新状況やFTA交渉の農業分野への影響など協議
2017年1月23日 地中海連合外相会議、バルセロナで開催(EU議長)。第2回地域フォーラム準備等協議
2017年1月23日 ルッテ蘭首相、主要紙に蘭の価値観に従えぬ移民は国を出ろと訴える意見広告掲載
2017年1月23-24日 第2回地中海地域フォーラム、バルセロナで開催。若年層の安定・成長など協議
2017年1月24日 英最高裁、8票対3票の多数で、EU離脱通告前には英議会の事前承認が必要との判決
2017年1月24日 EU報道官、イスラエルの占領地入植活動に対し、国連決議やEU政策に反すると批判
2017年1月24-25日 第9回欧州宇宙政策年次会議、ブリュッセルで開催。欧州宇宙戦略の展望等協議
2017年1月25日 欧州委員会とモゲリーニ上級代表、地中海中央部での人の移動の管理政策案を発表
2017年1月25日 欧州委員会、欧州国境沿岸警備機関(EBCG)の成果報告発表。発足後3カ月の成果強調
2017年1月25日 第2回日・EUサイバー対話、ブリュッセルで開催。最近の取組や多国間枠組など協議
2017年1月25日 財務省貿易統計、昨年12月の対EU貿易は輸出7110億円・輸入7157億円で47億円赤字
2017年1月25日 EU報道官、クウェートでの7名の死刑執行に対して、同国へ執行停止求める声明
2017年1月26日 ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)、ギリシャ改革進捗や支援計画後審査等協議
2017年1月26日 EU、教育助成「Erasmus+」30周年に寄せ統計発表。2015年度は過去最多69万人参加
2017年1月26日 モゲリーニ上級代表、国際ホロコースト記念日を前に、反ユダヤ主義の対処の声明
2017年1月26日 英政府、「2017年EU(離脱通告)法」を議会に提出。英首相のEUへの離脱通告を規定
2017年1月26日 ファン・デア・ベレン墺大統領、就任演説でEUは脆弱でも難民受入に強い意欲示す
2017年1月26日 クリミア当局、人権弁護士クベジェノフ氏拘束。29日EU報道官、人権状況悪化非難
2017年1月27日 EU経済・財務理事会、経済成長見込みやマクロ経済不均衡・EU予算財源報告等協議
2017年1月27日 EU、中国及び台湾企業8社のステンレス鋼管に5.1%から64.9%の不当廉売関税賦課
2017年1月27日 英米首脳会談、ワシントンで開催。NATOの重要性や対テロ協力・FTA協議開始等協議
2017年1月27日 独仏首脳会談、ベルリンで開催。メルケル独首相、英除くEU27カ国の結束を強調
2017年1月27日 米政府、シリアら7カ国の国民の入国を一時禁止する大統領令。独英ら欧州諸国反発
2017年1月28日 EU報道官、中国が弁護士3名に拷問同様の取調の疑いに対し、同国に捜査求める声明
2017年1月28日 メイ英首相、トルコ訪問。首脳会談で通商協定作業部会創設や航空防衛協力等協議
2017年1月29日 加・ケベックでモスク襲撃、6名殺害。モゲリーニ上級代表、哀悼と同国支援の声明
2017年1月29日 国連ら3機関、南スーダン和平に向けシャトル外交の共同声明。翌日、EUも声明賛同
2017年1月29日 仏左派政党の大統領統一候補決選投票、アモン前教育相を選出。主要候補出揃う
2017年1月30日 地中海EU海軍部隊、リビア海軍及び海保当局とソフィア作戦第2訓練パッケージ開始
2017年1月30日 エンリア欧州銀行監督機構議長、不良債権処理のため資産管理組織(AMC)設立を主張
2017年1月31日 トゥスク議長、英除くEU27カ国首脳会談の招待状で、米政権の価値や中露等を懸念

【編集後記】

このメールマガジンでも告知をさせていただきましたが、1月30日にEUSI Sym
posium “Human Rights Issues in Europe and Asia” を開催しました。欧州、
アジアおよび日本から10人にものぼる研究者が最新の研究成果を発表しました。
かなり専門的な内容であり、しかも通訳なしで行われたにも関わらず、予想を
超える多くのかたに参加していただき、大変有り難く思っています。
トランプ米国大統領の行動を見ていると、1960年代の米国内での人種差別と
公民権運動をめぐる激しい対立の時代をふと思い出します。欧州社会における
差別意識の高まりにも共通するものを感じることができます。国際的なテロ
犯罪の増大という新たな現象に対応するためにも、経済的な低迷の中での富の
偏りと格差の拡大という問題を解決するためにも、我々は自国の力や判断に
だけ頼るのではなく、各国と協調しながら取り組んでいかなければならないと
思います。人権というのは法治国家の基本でもありますが、経済的な裏付けが
必要とされる問題でもあり、一歩間違えれば大きな政治問題と化す事柄でも
あります。国境の壁が低くなったこの時代こそ、人権について改めて真剣に
考えなければなりませんし、研究者の知恵が求められているように思われます。

(藤川哲史・EUSIメールマガジン編集担当)

毎年この時期は、アメリカではゴールデングローブ賞(1月9日)やアカデミー賞
(2月26日)など、映画に関する祭典が数多く開催されます。
そのような中で、現在ベルリンではカンヌ・ベネチアとともに世界三大映画祭
と呼ばれるベルリン国際映画祭が開催されています(2月19日まで)。
昨年最高賞の「金熊賞」に輝いたのは「海は燃えている」(原題:Fuocoammare)
という作品でした。これはアフリカ大陸に最も近いイタリア最南端の島である
ランペドゥーサ島で暮らす人々の静かな日常と、もう一つの日常――すなわち
年間5万人をこえる難民・移民が対岸のアフリカから押し寄せてくる難民危機
をテーマとした作品です。
人口5500名のこの島には、年老いたピエトロ・バルトロ医師がたったひとり。
彼は20年間この島で、島の人々だけではなく、危険を承知で海を渡る途中に
海難事故に遭った難民たちを数多く診ざるをえませんでした。映画のなかで
彼はつぶやきます「どれだけ死体検分をしたかわからないが、決して慣れる
ことはない」
この作品が、日本でも先日2月11日より公開されました。渋谷のBunkamuraを
皮切りに、今月は福岡・大阪・名古屋・横浜で、来月以降は全国各地の単館系
の映画館で順次公開されます。
ベルリンだけではなく、ヨーロッパ映画賞やロンドン映画批評家協会賞などの
ドキュメンタリー部門で数多くの賞を受賞してきたこの作品を通じて、少し
でも多くの方々に難民問題への関心を高める機会となればと願っています。

映画「海は燃えている」
http://www.bitters.co.jp/umi/

(林 大輔・EUSIメールマガジン編集担当)

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