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レポート

2015.06.02 ファン=ロンパイ欧州理事会前常任議長講演会「世界の中の日・EUパートナーシップと EUの役割」

ヘルマン・ファン=ロンパイ欧州理事会前常任議長(EU前大統領)講演会
「世界の中の日・EUパートナーシップとEUの役割」

日時: 2015年6月2日(火)14:45-16:15
会場: 慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール
主催: EUSI (EU Studies Institute in Tokyo) | 共催: 慶應義塾大学 | 招聘: 国際俳句交流協会 (HIA)

パネリスト
ヘルマン・ファン=ロンパイ(欧州理事会前常任議長(EU前大統領))
田中俊郎(慶應義塾大学名誉教授、ジャン・モネ・チェア、EUSI理事)
鶴岡路人(防衛省防衛研究所主任研究官)
司会: 細谷雄一(慶應義塾大学法学部教授、EUSI執行委員)
http://eusi.jp/outreach/seminar-workshop/seminar-politics/2015-0602/

2015年6月2日(火)、ヘルマン・ファン=ロンパイ欧州理事会前常任議長(EU前大統領)講演会「世界の中の日・EUパートナーシップとEUの役割」が、慶應義塾大学三田キャンパス北館ホールにて開催されました。当日の講演会は、ファン=ロンパイ前議長ならびに田中俊郎・慶應義塾大学名誉教授(EUSI理事・ジャン・モネ・チェア)と鶴岡路人・防衛研究所主任研究官をパネリストとし、細谷雄一・慶應義塾大学法学部教授(EUSI執行委員)の司会の下で進められました。

慶應義塾大学到着時のファン=ロンパイ前議長

慶應義塾大学到着時のファン=ロンパイ前議長
講演会に先立ち日本国内のEU研究者との意見懇談会

講演会に先立ち日本国内のEU研究者との意見懇談会


会場・北館ホールに入場

会場・北館ホールに入場
駒村圭吾・慶應義塾常任理事と中西優美子・EUSI所長による挨拶

駒村圭吾・慶應義塾常任理事と中西優美子・EUSI所長による挨拶



最初にファン=ロンパイ前議長は、在任中(2009年-14年)にEUは特に2つの危機に直面していたと振り返りました。ひとつはユーロ危機、もうひとつはウクライナ危機です。

まずユーロ危機に対して、EUは「責任」と「連帯」という2つのアプローチを取るよう努めてきました。すなわち、ギリシャなど債務危機に直面した国々は財政再建を行う「責任」があることを明確にし、それを着実に実行することで欧州は「連帯」を高める、というものでした。このための具体的な取り組みとして、EUは財政規律の遵守や、ECBによる弾力的な金融政策、成長のための投資計画、さらに銀行同盟・エネルギー同盟・デジタル同盟など様々な政策領域における更なる統合を推進してきました。

そしてウクライナ危機においては、「毅然さ」(firmness) と「関与」という2つのアプローチを取り、ロシアに対して「毅然」とした姿勢で制裁を課しながらも、それはあくまで彼らを罰したり脅したりするのではなく、責任あるステークホルダーとして交渉につかせるよう「関与」させることに心を砕いていました。ファン=ロンパイ前議長はこの時の自らの役割を、EU加盟国28カ国の意見を調整しつつひとつの方針にまとめることだったと述べました。

また日・EU関係は、EUにとっての中国やインドとの関係と比べて、次のような点で異なると述べました。すなわちEUは、インドとは価値を共有しながらも利益をあまり共有しておらず、その反対に中国とは利益を共有しながらもあまり共通の価値を共有していない――だが日本とは利益と価値の双方を共有しており、その意味でもアジア諸国の中で極めて重要なパートナーシップを形成している、というものでした。

ファン=ロンパイ前議長による講演

ファン=ロンパイ前議長による講演
講演中のファン=ロンパイ前議長と司会の細谷雄一教授

講演中のファン=ロンパイ前議長と司会の細谷雄一教授


パネリストの鶴岡路人主任研究員と田中俊郎名誉教授

パネリストの鶴岡路人主任研究員と田中俊郎名誉教授
パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子



これに対して田中俊郎名誉教授は、欧州はこれまで危機に直面しても、むしろそれらの危機こそが更なる統合を促進してきたと述べました。また日本ではEUを経済統合の側面で捉えがちであるが、2012年ノーベル平和賞受賞の理由にあるように、EUは平和や民主主義を促進したという政治的・価値的な側面や、1963年以来800万人以上の青少年交流を行ってきた仏独の経験に基づくエラスムス・プログラムなどの文化的側面でも重要な役割を果たしてきたことは、決して無視できないものであることを強調しました。

また鶴岡路人・防衛研究所主任研究員は、現在の国際環境の大きな変化の中でのEUの役割に言及しました。すなわち、中国やインドの台頭、中東におけるテロや内戦などの地域情勢不安、ロシアによる武力に基づく現状変更など、EUにとって東方及び南方で非常に大きな問題を抱えている。そのような中でEUは、2003年「欧州安全保障戦略」(ESS)発表以降、関与を拡大し続けてきた。今後EUにとっていかなる優先順位を設けて対処するかが重要であることを述べました。

そして会場からは、ギリシャやイギリス総選挙など統合に懐疑的な勢力が伸長している中で今後のEUの将来をどう見るか?EUは中国に対してどのような姿勢であるのか?EUはアメリカと比べて影響力が限られている中でなぜより積極的な行動を取らないのか?など多様な質問が寄せられました。ファン=ロンパイ前議長はそれらの質問に対してひとつひとつ誠実に答えて下さり、盛況のうちに講演会は終了しました。

フロアからの質疑応答

フロアからの質疑応答
会場の様子

会場の様子



その他当日の講演会の写真: http://eusi.jp/photogallery/
[写真撮影:石戸晋]